今後気になった日本とインドのM&A案件や、関連するトピックスについて解説・コメントしていきたいと思います。第一弾として、Facebookによるインドテック企業への巨額投資が公表されましたのでディールの概要を纏めています。今後の配信をご希望される方は、下記より「お問い合わせ」ページに「ニュースレター配信希望」とご連絡を頂ければ幸いです。
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2020年4月22日、インド工業財閥大手のReliance Industriesは、子会社でテクノロジー会社のJIO Platformに、米国ソーシャルメディアのフェースブックが4,357.4億ルピー(約6,100億円)を投資する契約を締結した旨を公表しました(独禁法当局の承認を得て実行される予定)。3月末ごろに観測記事が出ていましたが、今回正式なプレス発表となります。これによりフェースブックは、Jio Platformの9.9%株式を取得する(増資実行前の株式価値は約4兆ルピー≒5.6兆円。プレスに増資実行前の企業価値は約4.6兆ルピー≒6.4兆円とありましたので有利子負債が6,500億ルピー≒9千億円ほどある計算になります)。(下の図解をご参照下さい。)
同時に、Reliance Industriesの子会社であるReliance Retailと、Jio Platform、Facebookの子会社であるWhatsAppの3社は、コマーシャルパートナーシップ契約を締結したとあります。これにより、現在Relianceグループが推進している、Eコマース事業(JioMartという無料宅配通販アプリ等)の加速を図るとしています。また、ポスト・コロナのインド経済再生に、包括的なデジタライゼーションが必要不可欠であるとしています。
プレスの中で、Reliance Industriesのムケシュアンバニ氏は、すべてのインド国民のためのインドのデジタルエコシステムの成長と変革のためにフェースブックを長期的なパートナーとして招聘したと、本パートナーシップがモディ首相が推進するデジタル・インドの実現に大きな貢献ができるとし、ポスト・コロナのインド経済が短期間で回復・復活する事を確信しており、またこのパートナーシップが重要な貢献を果たすとしています。
コロナショックで停滞を余儀なくされると見込まれているインド経済にあって、フェースブックによる巨額の投資は非常に明るいニュースとして受け止められています。大きな変貌を余儀なくされる消費者の生活に寄り添うテクノロジーの進化をビジネスチャンスと捉え、先進的な技術を取り入れつつ、余計な議決権を渡さない(10%未満)インド財閥の強かさを感じます。
Jio Platformの子会社でインターネットプロバイダーのReliance Jio Infocommは、インターネット加入者388百万人をほこる後発ながらインドの最大手の一角です。NTTドコモの契約数は約80百万件という事なのでそのスケールの大きさがわかります。この巨大市場インドへの参画の機運の高まりがコロナの影響によってディールが中断されなかったことでも伺えます。昨年、アマゾンと、インド小売り大手のFuture Groupが資本提携し、今年に入って同様のアレンジメントでインドのEコマース領域への進出を進めるなど動きが加速しています。
以上